『もう2度と、会いにこないで』



中3の冬、俺たちの恋は無残にも終わりを告げた。


雪が止む頃にはもう、お互いが別々の道を歩み始めていたんだ。




「…突然呼び出してごめんなさいね」

「いえ…」



3月。俺は瑠衣のお母さんに呼び出され、駅前のカフェで会うことになった。


何ヶ月かぶりに見た、どこか笑顔の戻ったその姿に少し安心した自分がいた。



「瑠衣はもうすっかり普通に歩けるようになったわ。最近ではもう、前みたいに普通に笑うようになった」


「そう、なんですか…」



退院したと聞いたあとも、瑠衣は1度も登校することなく卒業を迎えた。


ちなみに、瑠衣を突き飛ばした女子も不登校になった。



「瑠衣は春から白川高校に入学することになったの。事情を知ったサッカー部の先生が校長先生に掛け合ってくれて」


白川高校、その名前に俺は当然聞き覚えがあった。



女子サッカーの強豪校で、瑠衣が推薦で行くはずだった高校だ。


俺が入学する学校とはそこまで離れていなかった。



「瑠衣にはあなたの話はしていないわ。けど…あなたには知っておく権利があると思って」

「…ありがとうございます」


「事故の原因はあなたじゃないんだし、ずっと根に持つ必要は無いわ。あなたは…サッカーに不思議な縁があるんだから」



高校生活楽しんでね、と言い瑠衣の母は帰っていった。


最後に、白川高校の制服を着て笑う、瑠衣の写真を俺に送ってくれた。