サワーチェリーパイ 6ピース

でも、最後に勝ったのはヒビを食い止めた僕。


「残念だね、でも、向こうに行っても頑張って」
「駿府君……」


ここで、抱き寄せて涙を拭けば良かった。


でもそんな事をしたら、きっとルナちゃんは辛い気持ちから抜け出せなくなる。


僕だって、もう2ヶ月後には受験が始まるんだ。


分かってもらえなくてもいい、だけど、今はそんな状況じゃない。


「カゼでもひいたら大変だよ、帰ろう。家まで送るから」
「いいよ……こんな顔、見られたくないから」


自転車に乗って僕には追いつけないスピードで走り去る彼女の後姿を、1人見送ってから空を見上げる。


月はその日、鋭いような光を放っていた。