白い指がカタカタとキーを叩く、その度に僕の冷静沈着な頭脳は乱されそう。


「そちらにお貸ししていた教材の件ですが、返却時に破損がありましたので請求書をお渡ししますね」
「はい……」


いつデートに誘おうか、でも、きっと君は僕だって気付いてないよね。


昔、僕らは出会ってたのに。


そして、僕は生まれて初めての恋をしていたのに。


今、成長してここで出会って、また君にアプローチしたいなんて思いを無視するかのように書類だけ渡して、PCに視線を戻しているから。


「駿府助教授、何か? 」
「いえ、別に……」


請求書を受け取り、そのまま研究室に戻っても僕のモンモンとした気持ちは晴れない。


あの時、食事にでも誘えば良かったな。


そうしたら、叶わなかった初恋を実らせる事が出来たかも知れない。