サワーチェリーパイ 6ピース

それから10年、まさかこんな所で会うなんて。


用務課から研究室に戻る間、長い廊下を歩きながら考える。


このまま引き返して、食事にでも誘えばいいんじゃないかと。


でも、あんなに綺麗になったんだからきっと彼氏の1人や2人、いたっておかしくない。



もしもそうなら、僕のこの10年はきれいに忘れよう。


居なければ、今度こそ気持ちを……。


「駿府助教授! ちょっとよろしいですか? 」


あの声が後ろから響く、そっと振り返ると書類を手にした彼女がグレーのスーツ姿で立っていた。


「書類に不備でもありましたか? 」
「ええ、ここの記載に漏れが。それと、お久しぶり」


10年の時間が、僕の心を覆っていたあの時のガラスが、ガシャンと音を立てて壊れる。


「コラーッ! また割ったのか! 」
「すみませーん! 」