極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~

「ん、いいね。よく似合ってる」
「…っ」
切れ長の瞳がまとう迫力はそのままに目の覚めるような色気が滲み出たようなその笑顔に、思わず言葉を失ってしまう。

…って、見とれてる場合じゃない!

「あの…申し訳ないんですけど。私こんな豪華なドレスを買えるような…」
「必要ないよ。俺が君に着てほしくて勝手に贈ったものだから」

お金は持っていない…そう続くはずだった言葉は見事に遮られ、代わりに庶民の私にとっては現実味のない言葉が耳に届いた。

「こ、こんな豪華なもの頂くわけにはいきません!そもそもシャンパンをこぼしたのだって私の責任で…」
「なんにしてもさ」

私の言葉をやんわり制止するように、彼の声が響く。

「俺、女性に汚れた服を着せたまま放っておく神経は持ち合わせてないんだ」

恥ずかしげもなくそんな台詞を言い放つこの人は、いったい何者なのだろうか。
疑問ばかりが頭の中を渦巻いて言葉を紡げずにいると、いつの間にかこちらに歩いてきた彼が耳元で囁いた。

「贈ったものを受け取ってもらえないのがいちばん辛いんだけど…受け取ってもらえる?」
「っ…は、はい」
「ありがとう」

甘い声と優しく頭を撫でる彼の手の温もりがそれ以上の追求を許してはくれず、その瞬間の私には頷くほか選択肢はなかった。


「それじゃあ、パーティー楽しんでね」
そうして私を先ほどの会場まで送り届けた彼が、目の前で踵を返す。

…遠くなりかけた背中に思わず駆けよって彼のスーツの裾を掴んだのは、ほとんど衝動的な行動だった。