―――あれから1週間。
結局自分の誕生日を伝えられないまま雪さんは出張に行ってしまい、私は誕生日当日を迎えていた。
この1週間も毎日のように雪さんは忙しくしていて、出張から帰ってくる予定は明日の夜らしい。
「明日か…」
空を見上げながら思わず口から零れた呟きは誰の耳に届くこともなく自分の中にだけやけに虚しく響いた。
仕事中なのにこんなことを考えてしまうのは、今日の打ち合わせ先が雪さんの会社の向かい側だからだ。
「先輩、打ち合わせ時間通りで大丈夫みたいです」
「あ、ほんと?確認ありがとう」
しかしそんな私もなんだかんだ新プロジェクトで忙しく、毎日やることは山積みで。今もこれから美月ちゃんと一緒に打ち合わせに向かうところだ。
今は仕事仕事!
少しだけ沈みそうになった気持ちを切り替えるように首を横に振る。
「よし!頑張ろう!」
「え、どうしたんですか急に」
「いや、気合入れ直してみた」
「本当先輩って表情がうるさいですよね。いい意味で」
突然ガッツポーズを見せる私に冷静に失礼な突っ込みを入れながらも、美月ちゃんの笑顔はどこか優しい。
「今のって誉め言葉?」
「半々ですかね」
私はいいと思いますけど、そう付け加えたあと美月ちゃんが腕時計に目線を落とす。
「そろそろ行きましょう」