「は…恥ずかしいです」
「言うまでやめてあげない」

何度も角度を変えて繰り返されるその合間に言葉を紡ぐけれど、それはいとも簡単に却下されて。
それどころかその言葉をきっかけに深くなった口づけのせいで、徐々に膝から力が抜けていく。

身体、もたない…っ

「っ、ゆ、きさん…」
「…ん、合格」

恥ずかしさをこらえて途切れながらもそう名前を呼ぶと、相沢さんは満足そうに…そしてどこか意地悪に微笑んだ。

「でも、もう立ってるのがやっと…かな?」
「…っ」

ぴったり言い当てられた言葉に言い返すことも出来ず、顔が熱を帯びていく。

私、今、絶対顔真っ赤だ…

「ちゃんと名前を言えたお姫様に、ご褒美をあげないとね」

甘い囁きが聞こえてふわっと身体が浮いたかと思うと…次の瞬間お姫様抱っこされていることに気付いて、全身の体温がさらに上がっていく。

「相沢さ…」
「ゆーき」

名字を紡ごうとした私の唇の動きを訂正するようにのびてきた、雪さんの長くて綺麗な人差し指。

「っ、雪さん…」
「ん」

そうして寝室までやってくると優しく身体を下ろされて、ベッドの上に背中が触れた。

「限界なのは俺の方かも」

呟くようにそう言うと、緩んだネクタイを外しながら雪さんが私の上に覆いかぶさる。

「好きだよ、茜」
「私もです…」

熱のこもった視線に見下ろされ、雪さんの澄んだ瞳に私が映る。そのまま私たちは気持ちを確かめ合うようにお互いを求めていった。