「迎えのものも送らずに申し訳ありません」
「いえ、こちらが勝手に早く来ただけですから」
謝罪する編集長に対して、相沢さんも眉を下げながら顔の前で手のひらを横に振っている。

「連絡もなしに申し訳ございません。社長に急な会議が入ってしまったため、可能であれば今から打ち合わせを始めさせて頂きたいのですが、いかがでしょうか」

隙の無い声色とともに斜め後ろから現れた、これまた整った顔をした男の人。
口ぶりからして彼は相沢さんの秘書、というところだろうか。

「ええ、こちらは問題ありませんわ」
快諾の返事を返したあと、疑問を含んだ編集長の視線がゆっくりと私へ注がれた。

「あ、えっと…」
「彼女とは少し面識がありまして。個人的にはこれから仲を深めていきたいと思っているのですが」
言い淀む私の代わりに質問に答えたのは、王子様みたいな笑顔を纏った相沢さんだった。

「あらあら。じゃあ柏木さん、相沢社長を会議室までお連れしてくれるかしら?私も資料を持ってすぐに向かうから」
「は、はい…わかりました」

絶対なんか勘違いしてるよね…!

…とは思いながらもその場で上手く訂正することが私にできるはずもなく、仕方なく王子様の先に立って歩き出したのだった。