結局最後までしっかりと俺の頼みごとに向き合ってくれた彼女は、進められるままにアルコールを飲んでしまったせいで眠ってしまった。

「悪いことしたな…」

ぼそっと呟きながら、ベッドに横たわる彼女の額にそっと触れる。
ほんのりと赤くなった頬は少しだけ熱を持っていて、これ以上側にいたら無防備な彼女に身勝手に触れてしまいそうで手を離した。

ちょうどそのタイミングでやってきたルームサービスの女性に彼女の服を脱がせてもらい、クリーニングに出して。

…彼女が目覚めたら何から話そうか。
そんなことを考えながら、俺はソファに横になり目を閉じたのだった。


――そして迎えた、朝。

…部屋に来てすぐ寝てしまったんだって、教えてあげた方がよかっただろうか。

パタパタと走っていく後姿を見送ってから部屋に戻ってすぐ…床に落ちている何かに気が付いて、そっとそれを拾い上げた。

それは、彼女と俺を結ぶガラスの靴のようにも思えて。

綺麗にハンガーに掛けられた昨夜脱ぎ捨てたはずのジャケットとシャツを一瞥してから、再び手の中のそれに視線を戻す。

「…律儀なシンデレラ、だな」

もう動き出していたその恋が、永遠になるなんてそのときはまだ思ってもみなかった。