その日を境に、なんとなく雪とは気まずくなって。
雪からしたらわけがわからなかったはずだし、今でもあの時のことは申し訳ないと思う。

意思とは反対にそのまま仕事は忙しくなり、それからはなかなか登校出来ない日々が続いた。
出席日数が足りなくても進級できる芸能人サポート制度があったおかげで、なんとか留年はしなかったけれど。

けれどそれ以来、私は屋上にも行かなくなった。
…雪のことが嫌いになったわけじゃなかった。自分の弱さに負けて、雪を傷つけるのがただただ怖かった。

それからあっという間に月日は流れ、高校生活は慌ただしく過ぎ去っていき…
雪が卒業後イギリスに行ったと知ったのは、彼が日本を旅立ってからだった。


―――

「うーん…」

過去の記憶に馳せていた思考を引き戻し、目の前の携帯の画面を見つめる。
画面に表示されているのは、どうしても消すことができなかった、雪の番号。

「あれからもう15、6年経ってるんだよね」
実際に言葉にすると、改めてその長さを感じるとともに時の流れの早さも感じる。

携帯の番号なんて、変わっているかもしれない。
今更なんだって、思われるかもしれない。

「…よし!」
ああだこうだ悩んでいるのも自分らしくないと思い、一呼吸おいてから、私は通話ボタンを押した。