始まりは、高校1年生の夏だった。

父の勧めで入学したその高校は、都内でも有名な資産家の子息息女たちが通ういわゆるセレブ高校というやつで。
芸能関係の仕事をする生徒も多数在籍しており、私もモデルの仕事をしながら学生生活を送っていた。


―――

「…誰?」

その日、私の憩いの場に先客がいた。
照り付ける日差しに透ける色素の薄い髪が、心地の良い風に揺れている。

「何?アンタも俺に相手して欲しいの?」
「は?」
「なーんだ、違った?…じゃ、邪魔しないでね」
「な…っ」

その妖艶な眼差しに、不覚にも一瞬どきっとした。
私の様子にククッと小さく喉を鳴らして笑った彼はそれだけ言うと、再び私に背を向ける。

えーっと、どういう意味?

目の前に寝転がる後ろ姿を見て考えてみるけれど、彼の言葉の意味はやっぱりよくわからない。

「ていうか、そこ私の場所なんですけど!」
「う、わ…っ」

駆け寄って、そっぽを向いた顔を覗き込む。
うとうとしていたらしい彼はかなり驚いたらしく、大きく身体をびくっと震わせた。

「っ…急になんなんだよお前!」
「アンタこそ!」

…それが、雪との出会いだった。