初めの印象は、良くも悪くも真面目な女。
あんな男に引っ掛かって心底可哀そうな、女。

だけどまぁ真面目なだけあって、仕事には人一倍真摯に取り組んでいると思った。
とはいえ、顔は良く言って中の上。まぁ言うなれば平凡という言葉がぴったりというような。

どうせ遊ばれているだけなのだろうと思っていたけれど、遊ぶ女としては少々向いていないというか…
彼女と関わるうちに生まれたただの「興味」が、いつからか「もっと知りたい」に変わっていて。
それがいつからなのか、それは自分でもよくわからない。

面倒なことになるのが嫌で距離を置こうとしても、容赦なく近づいてこようとするし。
まるで世話好きのどっかのおばちゃんみたいだし。

…きっと彼女のすることはいつも相手のことを思いやる気持ちから生まれているから、心にまで届く。
でもそれは、俺にとってはタチの悪い優しさでしかなかった。

そんな彼女のことを知れば知るほど見えてくる自分の気持ちに、目を背け続けるには限界まできていた。

同時に、茜先輩が本気でアイツのことが好きだということに気付いてしまった。
あの頃の里香みたいに。

そして今…アイツが本気で茜先輩のことを大切にしているということにも気付いてしまった。
その思いに俺が敵わないことも。

「あ~くそっ、なんなんだよもう…」
相沢が去って1人残された会議室の中に、俺の声だけが虚しく響く。

誰にも見られていないし、聞こえていない。だからもういいや…なんて。

――そう思っていた。