俺が再び相沢の存在を思い知らされたのは、自分が高校生の時だった。

当時俺は家庭教師をしてもらっていた年上の女性のことが好きで。
昼はどこかの企業で派遣社員として働いていた彼女が惚れたのが、そこの副社長だった相沢だったのである。
会社では出来ないと言って俺に相談するみたいに話をする彼女は、話の途中で泣き出すこともあって。
そんな男のどこが好きなのかと聞いた俺に、彼女は「好きだからだよ」といつか聞いたそんな言葉を返したのだ。

ともかくアイツにはいい思い出が全くといっていいほどなくて、最悪な印象だけが募っていった。

そんな時…なんの運命の悪戯か、この会社でまたもやアイツの顔を見ることになって。
何もかも手に入れたような相沢が少しでも痛い目を見ればいいと思って、茜先輩との仲をめちゃくちゃにしてやろうと思った。

なのに…なんで茜先輩だったんだよ。


「どこまでが、君の本音?」
そう尋ねられた時、こいつは全てをわかっていて俺の誘いに応じたのだと悟った。

俺の本音なんて、どうでもいい。
お前には関係ないだろう。

全部を見透かしたような言葉、余裕たっぷりの崩れない微笑み。
全てに腹が立って、もうどうでもよくなって、湧き上がる腹黒い感情のままに言葉をぶつけたのに。

胸の中に在る特別な気持ちを認めたくなくて、目を背けてたのに…なのに。

「君が一番わかってるんじゃない?」
そんなとこまで、お見通しだっていうのかよ。