――翌日。

朝起きてみると、昨日までの身体のだるさはなんだったのかというくらい体調はすっかり元通りになっていた。
これも茜先輩の看病のおかげか…なんて考えたけれど、どんな顔で会えばいいのかわからない。

しかしそんなことを言っていても時間が待ってくれるはずもなく。
数日ぶりに出社をした社内で声を掛けてくれる同僚たちと軽く挨拶を交わしてから、自分のデスクに向かった。

鞄を置いたところで隣のデスクに彼女の荷物すらないことに気が付いて、社員の予定が記されているホワイトボードに目を向ける。

1日外出…ってことは、今日は戻らないのだろうか。

つかの間であっても彼女と顔を合わせなくていいという事実は、俺を安心させた。

って、俺情けな…

けれどそう感じている自分にはあまりいい気持ちはしなくて。
そんなどうにも引っかかる気分になりながらも、休んでいた分の仕事に追われているうちにあっという間に時間は過ぎていった。

午前11時。
アイツの姿が視界に入ってきたのは、作業がちょうど一段落したときだった。

編集長と談笑を交わしながらオフィスに入ってきたアイツは、相変わらず嫌味なくらい完璧な笑顔を浮かべている。
あの頃と変わらない、何を考えているかわからないような。