極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~

「え、雪さん!?」
「あれ、茜…?」
ドアの向こうにいた彼と私が声を上げたのは、ほぼ同時だった。

驚いて目を見開く雪さんと私の間にいる茉優だけが、その場の状況を理解したように静かに深い息を吐いて…

「…ごめんなさい、私から説明します」

――そうして、雪さんを家の中に招き入れることになったのだった。

「…」
キッチンから聞こえてくるささやかな音だけが響くリビング。

一体何がどうなってこんなことに…

無意識に正座しながら膝の上に落としていた視線をちらっと少し上げてみる。
私の横には雪さんが、テーブルを挟んだ目の前にはなにやら必死で頭を悩ませている様子の茉優がいる…そんな状況だ。

「…どうぞ」
出来上がったばかりの湯気が立つ人数分のコーヒーを机に置いた夕が茉優の隣に腰を下ろす。それを合図にするように沈黙を破ったのは…雪さんだった。

「一応聞くけど…茜、高熱で倒れてはないんだよね?」
「茜の体調には全く問題ありません」
思いもよらなかったそんな言葉の意味を聞き返すより先に、答えは目の前から聞こえてきて。

そのまま茉優は…今日私を訪ねて会社にきた雪さんを家に招待していたこと。
それを知らせるために掛けた電話で私の様子がいつもと違うことに気が付き、言いそびれたこと。

「それで、2人が会うのは茜の気持ちがもう少し落ち着いてからの方がいいんじゃないかと思って。咄嗟に高熱なんて嘘をつきました…ごめんなさ」
「茉優ちゃん、謝らないで」
謝ろうとした言葉を遮られ、下げられようとした茉優の目線がゆっくりと再び上を向いた。

「茜のことを思ってついた嘘なら、俺が怒る理由なんてないよ」
「…っ」
そう言って優しく微笑む雪さんの姿に、頬を染めた。言葉を向けられた茉優も、その隣にいる夕も…そして私も。