極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~

「ねぇ茉優…」
なんだか気まずそうに夕から投げられた視線を受けて、茉優がはっとしたように立ち上がった。

ん?なんだろう…

慌てた様子で机に置いていた携帯を触り始めた瞬間、玄関のチャイムが部屋の中に鳴り響く。

「遅かったか…」
「遅かったって何が…?」

眉間を抑える茉優と苦笑いを浮かべる夕の顔を交互に見つめてみるけれど、まったく話が見えてこない。

「ていうか、今チャイム鳴ったよね?私出てくる…」
「いや!私が出るから茜はここに座ってゆっくりしてて!」
立ち上がろうとした私の肩を抑えるように伸びてきた茉優の両手によって、すとんと再びソファに座らせられる。

「この前通販頼んでるから、私の荷物かもしれないし…」
「こんな時間に通販は届かないから大丈夫!」

…おかしい。明らかに慌てている茉優も、目が泳いでいる夕も。

「…わかった」
「ん、じゃあ私出てくるから…なんだろう、新聞の集金かな~」

いや、私ら新聞なんて取ってないし。

隣では夕が額を抑えて、堪えきれなかったであろうため息をついている。

何か隠してるよね、絶対。

「私、コーヒーでも入れるね。茜も飲むでしょ?」
「あ、うん…ありがとう」
茉優が玄関に向かったのを追うように立ち上がった夕がキッチンへと向かった。

ごめん…茉優、夕!

夕がお湯を沸かすためにポットに水を注ぎ始めたのを確認した瞬間、素早く立ち上がり駆け出していく。

「あ、待って茜…!」
キッチンの横をすり抜けて玄関に向かい、少し隙間の空いたドアを押し開けた。