極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~

「もしもし」
「あ、茜?今日何時くらいに帰ってくる?」
「えっと…今から、帰るよ」
「…茜、なんかあった?」

私の周りにいる人たちは、私の些細な変化に気付くのがとてもうまい。

「っ、茉優…私…」
「とりあえず、帰っておいで」
優しく安心させてくれるような茉優の声に、少しずつ気持ちが落ち着いていく気がした。


家に着くと、心配そうな顔をした茉優と夕が揃って迎えてくれて。
緊張の糸が切れたみたいに泣き出した私の背中を、2人は黙ってさすってくれるのだった。

「――それで、何があったの?」

私の様子が落ち着いたところで茉優が切り出した言葉に、一つ息を吸い込んでからゆっくりと口を開いていく。
途中で何か口を挟むでもなく…2人は相槌を打ちながら私の話に耳を傾けてくれた。

「…なるほど」
「キスされたくらいでこんな泣くとか…いい年して何やってんだって感じだよね」

一通り話終えてから、誤魔化すみたいに自嘲気味に笑ってみせたのだけれど。
…そんな私を、茉優も夕も笑うことはしなかった。

「それだけ雪さんのことが大切だっていうのと、その…後輩くんのことも、人として大切に思ってるってことでしょ」
「…っ」
「茜が周りの人のことを大事にするの、ちゃんとわかってるから」

にっと微笑む茉優と夕の温かい笑顔に、また目頭が熱くなる。
この2人は私よりも私のことをわかってくれる存在なのだと、心から感じた。