「先輩、無防備すぎるでしょ…相沢の弱点はアンタなのに」
顔を上げた槙くんが青碧色の瞳を妖しく細め、熱を孕んだようなそれが私を射貫く。
相沢…?って、雪さんのこと?
「奪っちゃっていいですか?」
「え…?」
訳が分からないまま、見たこともない槙くんの瞳に囚われたみたいに目が離せない。
「そしたらアイツ、どんな顔するかな」
伸びてきた手が後頭部に回されてから、唇に温かいものが触れるまでは一瞬だった。
「っ、なにするの…!」
はっとして思い切り両手で目の前の胸を押し返す。簡単に離れた身体は熱かったけれど、そんなことにかまっていられる余裕はなかった。
「…帰るね」
俯いている槙くんの表情は見えない。けれどこのままここにいちゃいけないと思う気持ちだけで、私は荷物を持って勢いよく部屋を飛び出した。
エスカレーターに乗り、1階のボタンを押す。下に降りるまでの数秒間が途方もなく長い時間に感じられた。
「…っ」
マンションのエントランスを抜けたところで、羽織らずに無造作に手に持った上着のポケットの中にある携帯が震えていることに気が付いて立ち止まる。目を向けた画面は茉優からの着信を知らせていた。
顔を上げた槙くんが青碧色の瞳を妖しく細め、熱を孕んだようなそれが私を射貫く。
相沢…?って、雪さんのこと?
「奪っちゃっていいですか?」
「え…?」
訳が分からないまま、見たこともない槙くんの瞳に囚われたみたいに目が離せない。
「そしたらアイツ、どんな顔するかな」
伸びてきた手が後頭部に回されてから、唇に温かいものが触れるまでは一瞬だった。
「っ、なにするの…!」
はっとして思い切り両手で目の前の胸を押し返す。簡単に離れた身体は熱かったけれど、そんなことにかまっていられる余裕はなかった。
「…帰るね」
俯いている槙くんの表情は見えない。けれどこのままここにいちゃいけないと思う気持ちだけで、私は荷物を持って勢いよく部屋を飛び出した。
エスカレーターに乗り、1階のボタンを押す。下に降りるまでの数秒間が途方もなく長い時間に感じられた。
「…っ」
マンションのエントランスを抜けたところで、羽織らずに無造作に手に持った上着のポケットの中にある携帯が震えていることに気が付いて立ち止まる。目を向けた画面は茉優からの着信を知らせていた。

