窓の外が見慣れた風景へと移り変わる頃には、少しずつ日が落ち始めていた。

「着いたよ、茜」

先に降りた雪さんに丁寧にエスコートされながら車を降りて、目の前にある高いビルの中へと歩みを進める。

「えっと…どこに行くんですか？」
「次もきっと、茜が笑顔になれるところ」

にこっと笑った雪さんの返事を合図にするかのようにやってきたエレベーターに乗り込んだ。

「茜、高いところは平気？」
「え？あ、はい」
「ならよかった」
「…？」

どんどん上昇するエレベーターの速度が次第にゆっくりになっていく。
雪さんからの質問の意味を、私はドアが開いた瞬間に知ることになるのだった。

「うわぁ…！」

開いたドアの先に待っていたのは、ビルの最上階にあるヘリポートで。
導かれるままヘリに乗り込み、空の上に飛び立つまではあっという間だった。

なにこれ、綺麗すぎる…っ！

辺りが暗くなるにつれてまるでダイヤモンドを散りばめたかのようにキラキラと景色が輝き出していく。

「予想以上」
「え？」
「ふふ、なんでもない。喜んでもらえたみたいでよかったなって」
「最初はびっくりしましたけど…こんな景色が見られるなんて、嬉しいに決まってます」

数え切れないほどの無数の光が街に浮かび上がる頃には、辺りはすっかり夜闇に包まれていた。