「いや、何でもないよ。せっかくだし頂こうか」
「は、はい…」
話したいことはいくつかあるけれど…それよりも、今は。

「茜、座って」

茜の手を引いてソファへと導く。
栓を開けて金色のシャンパンを注ぐと、細かい泡がグラスの中ではじけて躍る。
2つのうちの1つを茜に手渡し、真っすぐに茜の瞳を見つめた。

「誕生日おめでとう」
「ありがとうございます…」
少し困惑したような表情をしていた茜の頬が、少し緩む。

近くで見る茜の瞼はいつもよりも少し腫れていて、目じりもほんのりと赤い。
悔しいけど…俺が来るまでの間、きっと御堂さんが茜の心に寄り添って傍にいてくれたのだろう。

茜が涙を流していた理由を、この出来事の発端を、すぐにでも確かめたい。
けれど、冷静に話をする余裕は自分の中にそんなに残されていなかった。

「茜、こっち見て」

顔を上げた茜にキスを落とす。
突然のことに驚いた茜の瞳が大きく見開かれる。この瞳に映るのが俺だけだったらいいのに。

「んっ、ちょっとまっ…」
「待たない」
茜の弱いところを刺激するように角度を変えて何度も触れていく。その甘い唇を独占するように、奥まで深く。

「っ、ゆきさ…」
誕生日に1人にして、不安にさせて、嫉妬して…挙句の果てに、今目の前にいる茜の言葉を聞いてあげる余裕すらない。