甘えられるのはあなただけ。

「ああ、君はあれか。Prince Eightの社員か。実はね、迷ってしまったんだよ。ほら、ここ広いでしょ?」


さすがに社員でなくともここに来てはいけないことくらいわかるだろ、と思ったが大事なお客様を失うわけに行かないので案内しようと思う。


「出口はこちらですよ、澤乃井様。」


我ながら完璧な笑顔で出口の方向を指す。だが、澤乃井はなぜか出口へは向かわずこちらをねっとりとした目でチラチラと見てくる。


「ああ、ありがとう。…それにしても君、可愛いね。名前はなんていうんだい?」


失礼な対応をここで見せてしまったら、あとがいろいろ面倒だし、会社に泥を塗る、足を引っ張るという行為は避けたいので仕方ないので名乗ることにする。


「名乗るほどの名前でもないですけれども、水瀬と申します。いつもお世話になっております。」