その涙は止まることを知らない。


「なっ泣くなよ。調子狂うな。」


そう言って髪を書きながら頬を赤く染めるその人は私の知らない向井 薫だった。


「だ、だだだって!」


ヒックっと言いながら泣く私に途中から笑い出す向井くん。


「薫」


いきなり向井くんが自分の名前をつぶやくからびっくりした。


「え?」


そう聞き返すと私の涙を向井くんの大きな手がぬぐい優しそうに笑った。


「薫って呼んでよ。」


ブスだの。なんだの言うくせにずるい。


「か、薫。」


すると嬉しそうににっと笑って私の頭をワシャワシャと撫でる。