高2の夏。
私、|鳳翔ナギ(ほうしょうなぎ)は同じ部活の
|赤城正宗(あかぎまさむね)と仲良くなった。


赤城君は、女子に優しくて、男子には当たりがきつい人。多分女子とつるむことが好きなんだと思う。
奢ってと言えばすぐに奢ってくれるし、
無茶なお願い事でも割と答えてくれるから、
まるでパパみたいな人。だから一部の女子からは
『パパ』と呼ばれたり『|赤パパ(あかぱぱ)』と呼ばれたりしている。いい人だけれど、恋愛対象にはされないような人。
ルックスも、ゴリラとおじさんを混ぜたような顔。


最初は私もその程度しか思っていなかった。



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7月下旬。2泊3日の部活動合宿が始まった。
湖の近くだから気温も私の地元と比べると
3、4℃程低くて、まだ紫陽花が元気に咲いていた。

合宿初日は小雨が降っていて、肌寒かった。
夜に開催する予定だった肝試しも、冷たい雨の中
傘をさしながら行うことになった。
肝試しのペアをくじ引きで決めることになったのだが、
私は語り手に選ばれてしまったせいで1番最後に1人で
回ることになってしまった。
なのに赤城君は部内で1番可愛い女の子と回るらしい。

どうしてだろう。色んな意味で納得がいかないのは。

肝試しが終わり、部員がそれぞれ就寝準備を始めた。
就寝準備をしていたら後ろから女友達の|寧希(しずき)が私に話しかけてきた。


「今から男子の部屋に遊びに行くんだけどナギも行かない?」

マジか。チャンス降臨!!しかし気持ちを抑える。

「え…でも男子の部屋に行くなんていけないって書いてあったじゃん…」

「でも、ナギは行きたいんでしょ?」

図星です!!!寧希はとても鋭いから、私の考えていることを全て見透かしている様な気がする。


結局、欲に負けた私は、寧希と他の女子たちと
一緒に男子の部屋に来ていた。

赤城君は不在だった。赤城君が部屋に居ないことに気がついた寧希が、男子数名に赤城君の居場所を聞いていた。私はその時、赤城君がすぐに帰って来そうな感じがしていた。


数分後、赤城君がのそのそと部屋に帰ってきた。
たまたま私は赤城君のベッドの上で、
部屋にいたメンツと雑談を楽しんでいた。
すると赤城君が私に近づいきて、

「そこ、俺のベッド。寝たいんだけど。」

と言ってきた。
なんなんだ…!こいつ!!!女子が部屋に居ることに
抵抗はねぇのかよ!

「あっ…ごめんごめん。退くよ。」

「いや、退かなくてもいいよ。」

………っは?!いや、お前寝たいんだろ?何なんだよ!

「え?」

「は?」

は?じゃねーーよ!マジで赤城君の脳内は読めない。
いや、読ませてくれない。

そんなやり取りをしていたら突然寧希が
男子の布団に入ってこう言った。

「私、今夜ここで寝る!!!!」

いや、待てよ…。お前は何をしでかしてるのか分からないのか…。でも、私もこのノリで赤城君と……。

私がチラッと赤城君の方を見ると赤城君が呑気にベッドの上で気持ちよさそうにヒゲを剃っていた。

ヒゲを、ヒゲを…ヒゲ、ヒゲ…ヒゲ。ヒゲェ…ヒゲェ
ヒゲッ!???!?!!

世の中の男子は、寝る前に歯を磨くようにベッドの上で
ヒゲ剃りをするのか????????
んなワケないよなぁ……。



もう深夜の3時を過ぎていた。
今 外に出れば私の足音に気がついた部員が顧問にチクるかもしれない。
私は|本人(赤城君)の承諾なしで寧希のように布団を被っていた。

「…おい!何してんだよ、俺のベッドだ!お前は
お前の寝床があんだろーが。返せっ!」

「うるさいな!おやすみ!赤城君!」

シングルベッドに2人。あんなに嫌がっていた
赤城君は、私よりも先に眠りについていた。
狭くて寝苦しかったけれど
それはそれで悪くなかった。
私はなんて強引なんだろう。

そのまま私は夜を過ごしてしまった。







続く