大切なキミの一番になりたかった。

「あの子に今一番必要なのは、時間じゃない。美野里ちゃんとの思い出がなにもない新しい場所だと思うの。ここには、あの子が幸せすぎた思い出がいっぱいで辛いのよっ……。日に日に弱っていく一馬を見るのが私も主人も辛いのっ……」

声を震わせ話すおばさんに、胸がえぐられるように痛くてたまらない。

落ち着かせるように小さく息を吐くと、おばさんは眉尻を下げ、今にも泣き出してしまいそうな瞳を向けてきた。


「あの子に口止めされていたの。当日まで引っ越すことを知花ちゃんや勇心くんには言わないでほしいって。……別れが辛いのよ。美野里ちゃんとの思い出と同じように、知花ちゃんたちとの思い出もたくさん詰まった場所だから」

「おばさん……」


「もしかしたら田舎に帰るのは、一馬にとって最善ではないのかもしれない。……でも私はもうあの子の弱り切った姿を見たくないの。新しい場所でまた一からはじめてほしい。……ごめんなさい、知花ちゃん。おばさんたちの身勝手で」

「そんなっ……!」

そんなことない。一馬のことを考えて決めたことなんでしょ?