十四歳の夏――。

それは私にとってきっと……ううん、絶対に忘れることなんてできない。

何年経っても夏がくるたびに思い出してしまうはず。

『あぁ、今年もまたこの季節がきたんだ』と――。



ピピピッ、ピピピッと規則正しいアラーム音で目を覚ました、夏休み三日目。

ベッドから起き上がり窓の方へ向かいカーテンを開けると、雲ひとつない青空が広がっていた。

「今日も暑くなりそう」

眩しい朝日に目を細めながら、両腕を上げてグンと背伸びし部屋を後にした。


中学二年生の夏休みといったら、部活動に遊びにと大忙しなのかもしれないけど私、橘川(きっかわ)知花(ちはな)の場合は違う。


「ごめん知花、ゴミ出しお願いしてもいい? あっ!それと洗い物も……」

玄関先で両手を顔の前で合わせ、申し訳なさそうに頼んできたお母さん。

エプロンをつけたまま見送りに来た私は、笑顔で伝えた。

「いつも言っているけど、それくらいやるから気にしないで。気をつけていってきてね」

「ごめんなさい、いつも知花に甘えっぱなしで。……っとと、遅れちゃう! いってきます!」