~結姫side ~

みんなが帰った後、私は良子に教えてもらったようにメイクの練習をしていた。

ガラガラ

病室のドアが開く。

「結姫」

聞き覚えのある優しい声がした。

愛する人の声。

「柊馬......」

そこには柊馬の姿があった。

私は急いでメイク道具を隠した。

突然のことでどうすればいいかわからない。

まともに彼のことを見ることができない。

あんなにひどいことを言ってしまったのだから、きっと私に文句を言いに......

しかし、柊馬の口から発しられた言葉は違っていた。

「白雪姫、あなたの魔法をときにまいりました」

そう言って笑った。

最初は戸惑ったが

「なによ、そのクサイセリフ」

と、私もつられて笑ってしまった。

すると柊馬の顔が少しかたくなった。

「凛子から全部聞いた」

いきなり彼女の名前が出たので驚いた。

凛子さんが?

信じられなかった。

「彼女も反省してる。だからあいつのことを許してやってくれないか?」

「っ......」

反省?

ここまで私を追いつめた人を?

そんな人を簡単に許したくはなかった。

けれど人を好きになるということがわかって凛子さんの気持ちがわかった。

だから

「うん......」

私は小さくうなずいた。

「ほんとうか!」

「うん」

「ありがとう、結姫」

柊馬は安心したというように笑った。

私が彼女のことを許そうと思えたのも柊馬がいたからだ。

2人の間に温かい時間が流れる。

「なあ、結姫」

と突然、柊馬は私のベットに座り、私の手を握った。

彼の手はとても温かかった。

まっすぐに私の目を見る。

「俺はお前が好きだ」

いきなりの言葉に頭の中が真っ白になった。

好き......

初めて言われた。

それって両思いってこと?

2人の気持ちが通じ合ったってこと?

今まで恋愛をしてこなかった私には何をすればいいのか、なんて答えればいいのか、ということさえもわからなかった。

ただ嬉しかった。

「嬉しい」

そうとだけ答えた。

柊馬は優しく微笑んだ。

私たちはひきつけあうかのようにキスをした。


そう、王子様が私を目覚めさせてくれた。

やっと待っていた王子様に出会えたのだ。