ロング・バケーション

しかし、正看ではなく准看護師で上等だと言い張り、それが嫌なら女子大へ行き、さっさと花嫁修行を始めろと言われた__。


思えばあの頃から、祖父は私を上流家庭へ嫁に出し、自分の所有する土地建物の管理を任せようと考えていた。

けれど、私はその思惑に反発するかのように、看護学校を卒業する前に祖母が入院していた病院が経営する老健施設への就職を決め、准看護師の仕事に慣れるまでは結婚もしません、と言い続けてきた。


あれから数年が経ち、近頃ではすっかり仕事にも慣れている。
それで、祖父は縁談を持ち出して、しかも相手は吟味に吟味を重ねて選んだのだろうと思う。
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「どうなんだ。凛!」


頭ごなしに怒鳴る祖父の声にハッと現実を思い出した。
興奮したように頬を蒸気させている祖父を見て、ドクターのことはまた話せないな…と思った。


「好きな人なんていません。結婚相手は自分で決めたいと言っているだけです!」


祖父も頑固だが、私だって相当な頑固者だ。
似た者同士が言い合っている声は、パート勤めから帰ってきた母の耳にも届いたらしい。