ロング・バケーション

それから着ている衣類を全部脱がせて全身を拭き上げ、その後、身体中の穴を脱脂綿で塞いでいくのだ。

鼻や口、耳は勿論、肛門も膣までも……。


それを何も言わず、手際よく進めた後で、真っ白な浴衣を身に纏う。

薄く死化粧を済ませた祖母の唇に紅を付けてあげて下さい…と頼まれ、私は震える指先で祖母に最後の色を付けてあげた。


ベテランと思われる看護師は、その様子を見ながら涙ぐみ、その光る粒が頬を伝っていく様を見た時、なんて気高くて尊い仕事だろうか…と感動した。



 
『私、看護師になる』


祖母の死後、そう決めると両親は賛成してくれたが、祖父は大反対だと拒絶した。


『私の孫が他人の世話をする仕事なぞ許さん!』


認めないと怒り、随分お冠だったのを覚えている。
けれど、娘の母が『立派な仕事です』と助けてくれて、看護師になろうと思ったキッカケを話してくれた。


『凛はお母さんの死後処置をしながら決めたんですって。素敵な志だと思いませんか?』


凛なら向いている、と言ってくれた。
祖母も喜んでいる筈…と言われた祖父は、仕様がなく折れることになった。