「おじいちゃん、これ…」


釣書の入った白い封筒を差し出した。
午後になって実家へ向かい、一人で部屋に居た祖父に迎えられリビングに入ってきたところだ。


「おお、どうだ。見合いする気にはなったか?」


嬉々とする祖父の表情を眺め、ううん…と首を横に振った。


「その逆。お見合いはしないから」


お返しします、と言って手渡すと、祖父は目を大きく見開いた。


「何を言ってるんだ。こんな好青年を振るのかね!?」


写真はじっくり見たのか?と聞かれ、ふぅ…と一つ溜息を漏らす。



「おじいちゃん、あのね」


私の言葉など聞こうとしていない祖父は、封筒を開けながら「馬鹿も休み休み言いなさい」と呆れている。


「この人なら、うちの土地建物を任せてもしっかり管理してくれる。
父親は信頼のおける不動産会社の社長さんだし、行く行くは彼がその会社を引き継ぐことになってるんだ。


私は凛に、そういう身元の確かな家の男と結婚して欲しい。
何処の誰とも知らんような男に引っ掛かって、財産を全部巻き上げられては困るからな」