ロング・バケーション

真面目に言うと、ドクターが同じ様に真剣な表情で、うん…と返す。


「だから、そうやって特別なことのように言うのはやめて下さい。今夜は私、そんなことを言って欲しくて部屋に連れてきた訳じゃないですから」


頑な態度にドクターは少しだけ表情を歪ませる。
悪いと反省したのか、もう一度だけ、うん…と頷いた。



「お鍋、食べましょうか」


ホッとして窓の側から離れようとした。
だけど、彼に腕を掴まれ止められてしまう。



「凛さん…」


さん付けで呼ぶ彼に振り向き、何ですか?と声を返した途端__……



「…っ!」


上から覆い被さってくる彼の唇が触れた。
私の唇に軽く乗り、その柔らかな感触に目が点になる。



「……俺、君のそういう所が好きだよ」


そう言い渡すと、再び唇を重ねてきた。

今度はじっくりと長い時間。
だけど、ほんの数秒間だったろうと思う。



「……鍋の続き、食べようか」


そう言うと、自分が先にローテーブルへと戻って行った。私は頭の中が真っ白で、膝は微かに震えていた……。