ロング・バケーション

「だったら俺の分を取ってくれよ。ネギとブリとホタテ」


「先生子供に返ってますよ」


「凛さんの前では気取ってないだけだよ」


自分は元来甘えん坊なんだ、と言い出す彼に、はあ!?と眉根を寄せてしまう。
ドクターは、ハハハ…と笑いながら、早く取って…と取り皿を差し向けてきて、私は呆れつつも受け取った。



(私はお母さんか!?)


そう思いながら言われた通りの物以外もよそって入れると。


「あっ、人参は入れないでくれよ」


返す、と言いながら箸で摘み上げ、ほら…と言いながら口の中に入れられてしまう。


「…熱っ!」


急に放り込むものだから驚いた。
ドクターは慌てて「ごめん」と謝り、大丈夫かと指先を唇に伸ばしてきた。


「アーンして」


いや、それはちょっと。


「…だ、大丈夫れすから」


下唇の辺りにある指先に胸を弾ませながら断る。
彼は納得できない感じで近寄ってくると、もう一度同じように「アーン」と言った。


「先生、酔ってますか?」


「ん?いや、まだあんまり」