ロング・バケーション

「実家には帰らないのか?」


「実家暮らしみたいな感じなので」


「それはどういう意味?」


「私が住んでいるワンルームマンションは祖父の所有物なんです。だから、実家も近所にあるから」


「ああ。成る程」


ふーん…と二度目の息を漏らして腕を組むドクター。
その頭越しに見えている壁掛け時計が、そろそろ自分の休憩時間であると指している。


「じゃあさ」


少し俯き加減だったドクターの目線が上がった。
私は首を傾げ、何ですか?と目を向ける。


「四日の休みは俺と遊ばない?働き者の野々宮さんを慰労してやるよ」


「慰労!?」


目を丸くしたらドクターは爽やかそうに見える笑顔を浮かべて頷いた。


「そう、君もたまにはリフレッシュしないとね」


いいだろうと言う言葉に半信半疑で頷いていた。
決まり、と彼が声を発したところへ国村主任が戻ってきて話は打ち切りになってしまった。



「野々宮さん休憩行っていいわよ」


ドクターと会話を始めた主任に言われ、ハッと我に戻った。



「行ってきます」