ロング・バケーション

「それを話せば、君の本質が分からなくなるから。

だけど、一つ言うなら俺は凛さんに今までの女性には無いものを感じ取ってる。
もっと君のことを深く知りたいと思うし、君にも俺の素を見せたいと思う。
だから、縁談は断ってくれないか。君が迷わない様に精一杯、真面目に付き合うから」


最初の時よりも声も表情も真剣そのものだった。
そんなに何故?と問いたくなったが、真面目に付き合うと言われた言葉に嬉しさを感じてしまった__。



「駄目かな」


寂しそうに目を見る彼の声に、胸がきゅん…と切なく鳴る。最初のデートの時からずっと、頭の中は彼のことしかない……。


「駄目じゃないです。…嬉しい」


正直な気持ちを話すと笑った彼が抱き締めてきた。

驚いてビクッと背筋が伸びたけれど、安心した様に彼が「良かった…」と言うのが聞こえ、こっちも肩の力が抜け落ちていく。


そ…っと離れていく彼と見つめ合う。
胸が鳴ってこの後はキスかな、と覚悟を決めたら_……


「安心したら腹が空いてきた。凛さん何が食べたい?」


運転席に座り直す彼を視界に入れながらポカンとした。