ロング・バケーション

腿の上で握っていた両手に彼の掌が乗り、ぎゅっと心を掴むかの様に握り締められた。


「俺と付き合うと言っただろ。今更逃げるなんて許さない」


「だって」


「俺が君を遊び相手にするとでも思ってるのか?さっき言っただろ。言い訳くらい聞けば…と」


「言い訳?」


見つめながら問うと、彼はうん…と声を低めて返してくる。手を握ったままの態勢で、悲しそうな笑みを浮かべた。


「どうも俺は女性達の間では相当遊んでる様に囁かれているみたいだけど、それは全く違うとこの場で言っておきたい。

俺は女性と付き合っている時はいつも真剣にその人しか見てないし、自分で言うのも何だけど、男にしては尽くす方だと思っている。

……だけど、どうしても許せない部分があるんだ。それを知ると一気に思いが冷めてしまう……」


言いたくなさそうに眉根を寄せ、彼は最後の言葉を言い放った。


「許せない部分?」


それは何?と思いつつ反復すれば、彼は真面目くさった顔つきで頷く。


「何なんですか?それ」


首を傾げたが、ドクターは教えてはくれなかった。