ロング・バケーション

声を固くして訊いてくる彼にゴクン…と唾を飲み込む。
祖父が用意していた思惑に乗るつもりもない…とは今更言い出せない__。


「休みの日に実家へ帰ったら用意されていて、祖父から釣書と写真を預けられました。ゆっくり眺めて決めていいからと言われて、部屋に置いてはいますが……」


実家で見て以来、放置状態のままだ。
最初から乗る気もないし、祖父には折を見て断りの電話を入れようと思っていたところ。


「受けるつもりなのか?俺との付き合いを反故にして」


詰問する様な眼差しに変わるドクターに、ぎゅっと唇を噛み締める。
そんなことする私ではないと彼にぶちまけてしまいたいけれど。


「分かりません。迷っています」


彼がこの先もずっと私一人だけと付き合うと言ってくれるのなら安心して断れる。
けれど、他の人と同じ様に扱われたら、自分が惨めなだけだと思うから。


じっと目を見返すと真っ直ぐに見直された。
まるで睨み合いの様な数秒間の沈黙の後、彼の唇が開いた。



「受けるなよ」


そう言うと助手席の背凭れに左腕を乗せて近寄ってくる。