ロング・バケーション

ICUを後にしながらも心配そうに見守る二人の親のことが頭から離れずにいた。
「子は鎹」だと言うけれど、別れた夫婦にとっても同じであるといいけれど……。


無言で駐車場に戻り、車内に入るとドクターが深く溜息をこぼす。
何となくそれも分かるな…と思いつつ、隣で自分も同じように息を吐いた__。


「堪らないな」


そう話す彼に、本当に…と同調する。

医療従事者として病と向かい合うと、時々ふ…と哀しさや憤りに襲われる。
どうにもならない現実を前に、怒りや空しさが湧き出そうになるけれど__


ぎゅっと手を重ねてそれらを我慢していた。
私が歯痒がって涙を零したところで何になる訳でもないと思って。

憤って泣いたりするよりも今は、無事に熱が下がり、峠を越えていくことの方が先決……。


ぎゅっと目を閉じて祈り続けていたら、そ…と手の上に温もりが重なった。
ぱちっと目を見開くと大きな手が重なり、自分のを包むように覆っている。


振り返ると彼がこっちを見ていた。
切なそうな顔つきで笑ってもいない。


「先生…」


声を漏らすと静かに微笑まれた。