「……俺、見舞いが済んだら君に聞きたいことがあるんだ」


顔を背けた私に向かい、彼がそんな言葉を言い放った。
振り返ると真剣な顔つきで、いいね?と問う。

多分お見合いのことだろうなと覚悟を決め、こくんと見つめ返して頷いた。


一般道へ降りてから三十分後、国立病院の駐車場に車を停めたドクターは、救急の受付で矢神さんの娘さんのことを聞いたが、彼女はまだICUにいるみたいで面会もできる状態ではないと教えられた。


「でも、とにかく行ってみよう」


ICUへ向かい出す彼の後ろを追いかける。
病状が深刻化していなければいいがと祈りながら足を速めた。



ICUの前では、矢神さんがソファで項垂れ、男性と二人で座っていた。

両手を祈るように組み合わせ、時折じっとドアの向こうを見つめている彼女。
その隣にいる男性も同じ様な体勢でいて、重い溜息を吐いては掌の中に顔を埋めている。


私達の足音を聞きつけて先に顔を上げたのは彼の方。
ゆっくりと動いた彼に気づき、矢神さんの視線が振り向いた。