ロング・バケーション

「……偉いなぁ」


感心した様な言葉が聞こえ、偉い?と問い直した。


「正に医療従事者の鑑だよね」


「そんなことないですよー」


褒めすぎ褒めすぎ…と手を振りながら謙遜。
鑑はさすがに褒め過ぎだと少し照れくさくなってしまった。


「いや、私用がなくても普通は休みを取りたくなるもんだろ。架空の用事を作ってさ」


「あーそうか。そういう手もありましたね」


どうもそういう嘘をついてまで休む気もなくて働いていたわ。


「野々宮さんは嘘をつくのが苦手?」


「うーん、まあそうかもですね。小さな嘘でもつくと色々と誤魔化さないといけなくなるのが面倒なので。
つかないといけない場面になると黙ってしまう質ですね。それか話題をスルーしちゃうとか」


「ああ、さっきスルーしたね」


笑いながらしっかりツッコミを入れてくるドクターに鋭い奴だとギクリとした。


「ねえ、その年明けの休日は何をして過ごすか決まってる?」


「何も決まっていませんよ。まあ神社くらいには参りたいかな…と思っていますけど」