語尾を濁す話し方に不安を感じる。
それで?と続きを促すと、きゅっと唇を締め直してから開かれた。


「受け入れて直ぐに、ただのインフルエンザではないと判断した。口腔内の舌の状態や両目の充血、発疹もあったし、手足も赤かった。だから間違いなく別の病気だと気づいた。

直ぐに点滴を開始して転移先への紹介状を書いた。その後で彼女を落ち着かせようと思い、食堂へ連れ出したんだ」


そこで矢神さんは自分のことを非難してばかりいたそうだ。どうしてもっと早く娘の異常に気づいてやれなかったのだろう…と言いだして泣き崩れた。


「その子の病気は何だったんですか?」


患者のプライバシーに踏み込んではいけないのは知っている。だけど、同じ施設内で働く同僚の子供だから気になる。


「…川崎病。一刻を争う病気だから悠長には構えていられなかった。早く治療を開始しないと、その子は心筋梗塞を起こして死んでしまうかもしれないから」


「川崎病…!」


思わず声を上げた。
病名や症状についてなら看護学校で習っている。
子供がかかり易くて発熱が続けばが冠動脈に瘤が出来て命が危うくなる病気だ。