「待たせてごめん。なかなか交替の医者が来なくて」
話している唇の隙間から白い息が漏れ出す。
それを見つめながら直ぐにでも昼間のことを問い質したくなったが__
「大変でしたね。お疲れ様でした」
最初からケンカ腰でいては駄目だ。
冷静に構えないと。
「うん、でもまあ、そんなに重篤な患者は来なかったし、何とかなったよ」
殆どの患者がインフルエンザだったと語りながら駐車場内に停めている自分の車のロックを解除する。
この間と同じように「乗って」と言う彼に頷き、助手席のドアに手を掛けて開いた。
だけど、助手席のシートが目に飛び込んできた瞬間、この間は何も考えてもなかったことが頭に浮かんだ。
このシートには、きっとこれまで何人もの女性達がお尻を付けてきたんだ。
車内で彼と会話して、中にはきっと別のことをした人もいる筈。
その人達の誰とも彼は長続きしなかった。
私もそんな人間の一人なのか__。
「凛さん?どうした?」
名前で呼んでくれる相手は恋愛経験が豊富で、誰にでも平気で触れる様な人___
「私……やっぱり歩いて帰ります」
話している唇の隙間から白い息が漏れ出す。
それを見つめながら直ぐにでも昼間のことを問い質したくなったが__
「大変でしたね。お疲れ様でした」
最初からケンカ腰でいては駄目だ。
冷静に構えないと。
「うん、でもまあ、そんなに重篤な患者は来なかったし、何とかなったよ」
殆どの患者がインフルエンザだったと語りながら駐車場内に停めている自分の車のロックを解除する。
この間と同じように「乗って」と言う彼に頷き、助手席のドアに手を掛けて開いた。
だけど、助手席のシートが目に飛び込んできた瞬間、この間は何も考えてもなかったことが頭に浮かんだ。
このシートには、きっとこれまで何人もの女性達がお尻を付けてきたんだ。
車内で彼と会話して、中にはきっと別のことをした人もいる筈。
その人達の誰とも彼は長続きしなかった。
私もそんな人間の一人なのか__。
「凛さん?どうした?」
名前で呼んでくれる相手は恋愛経験が豊富で、誰にでも平気で触れる様な人___
「私……やっぱり歩いて帰ります」

