ロング・バケーション

考え込んでいても駄目だと思い直し、既読が付かないのなら帰ろうと決めてロッカーを閉めた。


更衣室を出て職員出口を抜けようとした時だ。
短い着信音が鳴り、ビクンと背筋が緊張した。

さっと出口の外側の壁に張り付き、手持ちバッグの中からスマホを取り出す。



『ごめん。今交替の者が来たから。駐車場で待ってて。すぐ行く』


すぐ行く…の文字を見ると、きゅんと胸が狭まった。
私に送られてきた文字なのに、他の誰かにも同様に送っている気がして__。



自分に恋愛経験が無いせいで、こんな風に思うのだろうか。
それとも何か別の理由があるせいなのか……。


足を進めて歩き出し、職員用の駐車場に着いて間もなく、駆けてくる人の足音が聞こえて振り返った。

街灯の点いた狭い路地を白い吐き出しながら走ってくる人影がある。


背が高くて肩幅が広い。
イケメンでドクターで優しい性格の彼。
噂では遊び人だと称されている彼のことをこれまで仕事上でしか知らなかった__。



「凛さん!」


息を弾ませながら子犬のように近付いてくる。
その顔を見つめ、胸が鳴った………。