ロング・バケーション

城島ドクターだと思われる男性の隣にいる女性も何度も見たことがあるし、話したこともある人だ。


（あれは確か、連携室のケアマネジャー）


名前は矢神杏花（やがみ きょうか）さんと言った筈だ。国村さんとは同期で、この最近ご主人と離婚したと聞いている。


その話をした時、主任は「厄年だから仕方ないよね」とこぼしていた。

何かを無くすのが厄年なら怖いな…と話を聞きながら考えたのを思い出した。



（その人が何故、先生と…？）


ぎゅっと手を握ったまま何も言えずに見つめた。

私の位置から見える二人は、まるで恋人同士のようにくっ付いて話し込んでいる。
周囲にいる人達の目も憚らず、何をそんなに真剣に話しているのか。



（あ…！）


思わず声を上げそうになって唇を閉ざした。
ドクターの胸に額を付けて矢神さんが泣き出したのだ。


その彼女の背中を宥めるかのように城島ドクターは優しく撫でる。
私に付き合わない？と言ってきた人は、いとも簡単に他の女性に触れるような人なのか。