(……もしかしたら一昨日のあれ、やっぱり冗談だったのかな)


あの日、彼の誘いに乗らなかった私がいけなかったのかもしれない。
昨夜もリベンジしたいと言いながらも、私が誘いに乗る女かどうかを探っていたのかもしれない。


それなのに、私は乗らずにあっさりラインを打ち切った。自分の誘いに乗らない私に、彼は早くも愛想がついてしまったのかも。


(なんだ…やっぱり揶揄われていたんだ……)


そう思うと、祖父が持たせてくれた釣書の存在が有難いと感じた。
向こうが駄目ならこっちとは考えていないが、惨めな気分だけにはならないで済む。


落ち込みながらも同じフロアのバイタル指示者の病室を回り、全員の測定が済んでエレベーターに乗り込んだ。

医務室のある三階のボタンを押して、閉まるボタンを押そうとした時だ。


走り込んでくる足音にビクついて手を止めた。
白衣を着た男性は私が指を離したボタンを入ると直ぐに押し、その視線をこっちに流してきた。



「おはよう」


爽やかな笑顔を間近で見せて笑い、不意な行動に出られた私は息を飲んだ。