ロング・バケーション

「今日は一日ありがとうございました」


ディナーを食べに行こうと誘われたのは、当然ホテルの最上階にあるレストラン。

窓際のテーブル席には『RESERVED』のプレートが置かれていて、昨日のうちから予約されていたんだな、と直ぐに察しがついたけれど……。



「いやいや、こっちこそ」


まんまと嵌められたな…と思いつつグラスワインで乾杯。
アルコールを飲むということは、当然このホテル内に部屋を取っているということだ。


(いいのかな。こんな簡単に乗っちゃって)


貞操は大事にしなさい、と常々祖父母には言われていた。
頭の固い年代の人達の言うことだけれど、今まではその言い付けを守ってきたのだ。


そわそわする気持ちを堪えて一品ずつテーブルに届く料理を頂く。
ドクターのマナーはきちんとしていて、随分食べ慣れているな…と感じた。



「この後だけど…」


フルコースのデザートが届いた時、遂に来た!と焦りそうだった。
ドックンドックン、と大きくなる心音に、鎮まれと言うのが無理なくらいに思考が止まる。