本当はもっと早く言いたかったんだろうな、と話す父の声に我慢していたものがポロリと溢れ落ちる。
それを察した父は胸のハンカチーフを手渡してきて、幸せになりなさい…と言ってくれた。
「おじいちゃんのことは任せて大丈夫だから。凛は航くんと一緒に患者さんの為に尽くしなさい」
たまには会いに行くと話す父に、是非に…と笑って答える。
微かに聞こえだしたパイプオルガンの音色に、スン…と涙を吸い込み、父と顔を見合わせた。
「行こうか」
右腕を差し出す父の肘の辺りに手を滑り込ませ、きゅっと唇を噛んで頷く。
ドアが開けられると緑の山々と木目調の柱に出迎えられ、振り巻かれる花弁の中を進みながら、今日までの日々を振り返った。
幼い日に両親と住んだアパート。
高校時代に住み変わったタワーマンションからの夜景。
捨てられていた子犬達を家族として迎え入れたけれど、祖父と両親との雰囲気が鬱陶しく感じて、一人暮らしを始めたマンション。
看護師として働き始めた日々も、色々と失敗を重ねては落ち込んできた日々さえも。
それを察した父は胸のハンカチーフを手渡してきて、幸せになりなさい…と言ってくれた。
「おじいちゃんのことは任せて大丈夫だから。凛は航くんと一緒に患者さんの為に尽くしなさい」
たまには会いに行くと話す父に、是非に…と笑って答える。
微かに聞こえだしたパイプオルガンの音色に、スン…と涙を吸い込み、父と顔を見合わせた。
「行こうか」
右腕を差し出す父の肘の辺りに手を滑り込ませ、きゅっと唇を噛んで頷く。
ドアが開けられると緑の山々と木目調の柱に出迎えられ、振り巻かれる花弁の中を進みながら、今日までの日々を振り返った。
幼い日に両親と住んだアパート。
高校時代に住み変わったタワーマンションからの夜景。
捨てられていた子犬達を家族として迎え入れたけれど、祖父と両親との雰囲気が鬱陶しく感じて、一人暮らしを始めたマンション。
看護師として働き始めた日々も、色々と失敗を重ねては落ち込んできた日々さえも。

