だけど、ヨーロピアン調のカウチソファに腰掛けている祖父は仏頂面で、私が目の前に立っても見ようともしない。



「おじいちゃん、退院おめでとう」


本当ならこっちが御祝いを言われる立場なのだが、先ずは祖父が元気で此処に来れたことを喜んだ。


「航さんも心配してたの。無事に着いて良かった」


父にお疲れ様と声をかけると、少し涙ぐまれてしまった。人一倍優しい父を見ていると、こっちも涙が溢れそうになって、それを必死で我慢する。


「……絹江に凛のことを話してやらないと怒られるからな」


ボソッと呟く声が聞こえたから目を向けた。
祖父はカウチソファに挙げていた足を下ろし、ジロッと目線を上向きに変える。


「綺麗な花嫁さんだったと教えないと恨まれそうだろうが。たった一人しかいない孫なのに」


そう言うとフラつきながら立ち上がり、私の側へとやって来た。
だけど、顔つきは厳つい表情のままで、またしても何か嫌味を言うのかと身構えた。


「……全く、お前と言い舞と言い、親子揃ってわしの望まない結婚ばかりをしおって」