「こうして航さんといる時間が、私のバケーションだと思える関係でいたい。ずっとずっと私の側にいてね」


胸に顔を埋めていた彼は、真剣に願いだす私を抱き締めた。


「それはこっちの言う台詞だ」


田舎町に私を引っ込ませるんだから…と彼は呟き、失うものがある分、大切にすると誓った。


「何も失わないよ。これから航さんと一緒になって沢山のものを得るの」


今まで知らなかったことを含めて、沢山の財産を手にする。

それは祖父の持つ土地や建物みたいな形のあるものではなく、自然とか空気とか人情とか、無形で限りのないものばかりだ。



(愛情も……)


彼と抱き合いながら重ねていく時間を思った。
共に歩きだす日まで残り後わずかだ………。