ロング・バケーション

照れ隠しなのか、いきなり話を振ってくる彼に目を向ける。ちょっと…と袖を引っ張ったが、あの事を聞いてみれば？と呟くだけで。


（あの事？）


何だろうかと首を傾げ、ちらっと花梨さんを見て思い出した。


「聞きたいことって何ですか？」


ふわっと笑う彼女は昼間と少しメイクを変えている。
どちらかと言うとスッピンに近い雰囲気で、それもまた可愛いいなと思った。


「あ、あの、彼から聞いたんですけど、奥様は『マーメイドちゃん』と呼ばれていたんですか？」


私の質問にさっと顔色を変え、彼女は戸惑う様な視線を社長に向けた。

社長さんはその視線から離れるように反対側を向き、困った顔をしたまま花梨さんは私の方へと振り向いた。



「…ええ、まあ以前勤めていた場所で」


ぎこちない笑みを返してくる彼女に聞いてはいけないことだったのかな、と思ってしまう。

でも……


「それは、やっぱりスタイルがいいからそう呼ばれてたんですか？」


背も高くてウエストもキュッと締まっている。
手も足も長くてモデルみたいですよね…と褒めた。