ロング・バケーション

「あの人って本当にホテルが好きなんだよ。此処を良くする為に散々頑張ってきたって話だよ」


空を見上げながら話す彼の横顔を見つめ、それを花梨さんが支えてきたんだろうな…と考えた。


「つくづく凄い夫婦だよね」


夜空に目を向けて呟けば、ドクターは、ん?と視線を下ろしてくる。


「前向きというか、常に前進してるみたいで素敵」


小山内夫婦のことだと言えば、彼もああ…と頷いていた。


「私も航さんとあんな夫婦になれるといいな」


自分の両親みたいに思いやって、祖父母の様に寄り添いながら。


「なれると思うよ。だから俺は凛を選んだんだ」


囁く彼が肩を抱いて、その胸板に頭を付ける。

こうして彼の隣にいる時間が好き。
ゆっくりと時が流れているようで少しの間でも休んでいるな…と実感する。


「あら。こんばんは」


明るい声が聞こえて頭を元に戻した。
振り返ると小山内夫妻がテラスに出てきたところで、ドキッと胸を弾ませて緊張した。



「こんばんは。お二人も星空鑑賞ですか?」


ドクターは余裕の笑みを浮かべているが、私は隣で顔を引きつらせているままだ。