もう一度パンフレットを確かめておこうと手を伸ばしかけたが、ジロッと彼に睨まれ、スゴスゴと箸を握り直す。


「凛、食べる時は食べることに集中して」


自分が作ってないんだから…と言いたげな表情に、はーい…と肩を上げた。


私はドクターと付き合いながら、最近彼に登山の趣味があることを知った。
一月の三連休にも雪山に登っていたそうで、それで日焼けをしていたのか…と改めて気づいた。


実は、明日下見に行くホテルの社長さんも同じ登山会のメンバーらしくて、その縁もあり、六月の挙式を押さえることが出来たのだ。


「明日は小山内さんの奥さんがホテル内を案内してくれるんでしょ?」


小山内さんというのはホテルの社長さん。
その奥さんの名前は確か花梨さんといった筈で、自分の名前に似てるなぁ…と親近感を抱いたから覚えている。


「社長の奥さんなのにフロントで働いてるなんて偉い人だよね」


感心すると、彼が頷きを返した。


「潤也さんの話では、結婚する前からホテルでフロント業務をしていたそうだよ」